◎ コゾノ式 良 く な る 通 信 ◎ 第58号
2015年の中国人事コストアップ要因(まとめ)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━:2014.12.04発刊:◎◎◎
◎ 58号のポイント
- 2015年の中国人事コストアップ要因(上海市) ● 最大60万元のコストアップ!?
2015年は[農村戸籍]従業員の「社会保障制度」に要注意!!・[社会保険]:[外地・農村戸籍者]の過渡期期間が終了し・・!
・[住宅積立金]:当局が[農村戸籍者]への加入強制を画策か!?
小園です。
さて、今回は[Gold会員さまだけ]に配信していた[特集号]
● 2015年の中国人事のコストアップ要因 まとめ
をお送りします。
「盲点」になりがちなポイントです。
特に、影響が大きいと思われる「2点」にフォーカスしました。
ざっと試算したところ、会社によっては年間で会社の負担金が、、
● 40万~60万元 増(!?)
になってしまうことも・・・!!
「会社の負担金額だけ」の数字で、、です。
「昇給ゼロ」だったとしても増えてしまうコストとして、、です。
そのまま2015年の「利益直撃」ですので、ヒトゴトではありません。
要注意!
なんです!
・・・とは、言いつつ「全ての会社」でこれほどのコストアップが発生するという
ことではありませんので、ご安心ください。
最大のポイントは、
● 社内にいる、[農村戸籍]従業員さんの人数
です。
もし、社内に[農村戸籍]の従業員さんがいらっしゃるのであれば、今回の号はぜひご一読ください。
御社では「どれくらいのコストアップ」になってしまう可能性があるのか??
●[大まかに試算]できる[4ステップ計算式]
をご用意しました。
お忙しい方は、この4ステップだけでもチェックしておいてください。
それでは、今回も最後までお楽しみください。
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<今回のポイント> 2015年の中国人事コストアップ要因(上海市)
● 60万元のコストアップも!?
2015年は[農村戸籍]従業員の「社会保障制度」に要注意!!
・[社会保険]:[外地・農村戸籍者]の過渡期期間が終了し・・!
・[住宅積立金]:当局が[農村戸籍者]への加入強制を画策中!
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中国人事(上海)の2015年コストアップ要因「盲点」とは、
● 社会保険
● 住宅積立金
この2つです。
まずは、「社会保険」について。
2015年4月で、
● 上海の社会保険[過渡期措置]が終了
し、全ての従業員さんに[城鎮保険]が適用される「予定」になっています。
『・・・過渡期措置って何??』
と思われたかもしれませんので、ちょっと、今までの流れを振り返ってみましょう。
ときは、2011年にさかのぼります。
2011年7月に『社会保険法』という法律が施行されました。
「外国人にも中国の社会保険待遇を付与する」とはっきりと規定された法律、、、と
言えば、思い出す方もいらっしゃるかもしれません。
この法律が施行された当時、上海の社会保険は、3種類もありました。
● 城鎮保険
● 小城鎮保険
● 総合保険
この3種類です。
当時は、本人の戸籍地や、会社の所在地などによって、どの保険に加入できるのか
も違いましたし、保険納付額も待遇も全く異なっていました。
非常に「差別的かつ不公平な制度」になっていたんですね。
そういった状況は良くないので、『社会保険法』が制定されました。
社会保険は、外国人を含めて「公平にしていきましょう」という流れに一気に傾いていきました。
そこで、上海市では、、
● 5年間の[過渡期的措置]を導入して段階的に社会保険を[城鎮保険]に統合していく
ことになったんです。
それが、2011年のことでした。
そして、2015年。
この5年間の[過渡期的措置]が終了します。
「上海戸籍」の従業員さんへの移行措置は既に完了しているのですが、
問題は、
●[外地・農村戸籍]の従業員さん
なんです。
今年まで(2014年3月まで)は、[過渡期的措置]として、
●[外地・農村戸籍]の従業員さんの社会保険・納付額が「安く」なっていた
んです。
2011年以降、毎年少しずつですが納付額が上昇し続けてきました。
2015年、この[過渡期的措置]が終了する。
どんな影響があるのか??
2つあります。
(1)社会保険の納付[基数]がアップする
(2)社会保険の納付[比率]がアップする
(1)[基数]は、
2011年以降少しずつ引き上げられてきていました。
しかし、2015年はこれまで以上に[大幅アップ]になってしまう人も出てきてしまいます。
[基数]のアップは、[確実]です。
(2)[比率]も、
2015年4月から引き上げられます。
どの程度のアップになるのかは、現段階では不透明なのですが、、、
不透明??
・・・詳しくは、後ほどご説明します。
社会保険の[納付額]とは、
(1)[基数]×(2)[比率]です。
この両方が「引き上げ」られますので、、
◎ 社会保険の[会社負担・納付額]が[大幅アップ]
ってことになります。
仮に、本人の給与額が据え置きだったとしても、
[会社の負担コスト]は、[大幅にアップしてしまう]・・・!
ってことなんです。
では、どのくらいアップすることになるのでしょうか?
まず、[基数]について。
ポイントは、2つあります。
◎ 今まで[一律]で同額だった[基数]が、
<1> 本人の[前年度の平均給与額]に変わる
<2> [下限額]が定められ、[下限額]だけでも
2014年度を上回る金額になる
どういう意味?
ちょっとだけご説明しますね。
先ほども触れたように、直接のコストアップ要因となる社会保険の[納付額]は、
●[基数]×[比率]
によって算出されます。
[基数]の原則は、
● 社会保険に加入する本人の前年1年間の給与の平均
なのですが、
[過渡期的措置]によって、今年まで(2014年3月まで)の納付[基数]は、
●[一律]で[市平均賃金×55%]
になっていたんです。
従業員本人の[給与額に関係なく一律]だったんです。
具体的な金額は、2014年度で
● 基数:[2,770元]一律(=[市平均賃金:5,036元]×55%)
になっています。
この一律だった[基数]が、2015年から
<1>本人の[前年度の平均給与額]に変わる
ってことです。
『 ウチの外地・農村戸籍従業員は、年間を平均しても[2,770元]には届かないよ!
だから、関係ないよね? 』
・・・なんてお声があるかもしれません。
でも、残念ながらそうはならないんです。
先ほど触れたように
[基数]の原則は、
● 社会保険に加入する本人の前年1年間の給与の平均
なのですが、この[給与の平均]には、当年度の[上海市平均賃金]によって
[下限額]が、定められているんです。
●[下限額]=[上海市平均賃金]×60%
[上海市平均賃金]は、毎年3月頃に、上海市政府から発表されます。
ここ数年[上海市平均賃金]は7%くらいずつ上昇し続けています。
ちなみに、今年は前年比で7.3%上昇して5000元の大台に乗っています。
来年も今年と同じ伸びだと仮定すると[下限額]はこんな感じになります。
● 基数下限(想定):[3,240元]くらい
(=[上海市平均賃金:5,400元と想定]×60%)
大よその試算に過ぎませんが。
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◎ 一律[2,770元]⇒ 最低(下限)[3,200元]ほど
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このように[最低]でも、[基数]だけで、400元ほどアップしてしまうことになります。
「予算」として読むなら、最低でもこのくらいの[基数]に調整されるとしておくのが良いと思います。
これが、
<2>[下限額]が定められ、[下限額]だけでも
2014年度を上回る金額になる
の意味です。
ここまでよろしいでしょうか?
この[基数]に対して[比率]がかけあわされます。
先ほど、
(2)社会保険の納付[比率]がアップする
と言いました。
[比率]についてもポイントは、2つあります。
<1>医療保険の[比率]が引き上げられる
<2>3種類の社会保険が、5種類になる
こちらもカンタンにご説明しておきます。
まず、現在(2014年)の[外地・農村戸籍者]の社会保険納付[比率]は、こんな内訳です。
※ 会社負担分のみ
————————————————-
養老保険: 会社負担(21%)
医療保険: 会社負担(6%)☆
労災保険: 会社負担(0.5%)←基本比率
—————————————
会社負担分 合計 : 27.5%
————————————————-
一方、[過渡期的措置]後に統合される予定の[城鎮保険]の納付[比率]は、こんな内訳です。
※ 会社負担分のみ
————————————————-
養老保険: 会社負担(21%)
医療保険: 会社負担(11%)☆
労災保険: 会社負担(0.5%)←基本比率
失業保険: 会社負担(1.5%)★
生育保険: 会社負担(1%) ★
—————————————
会社負担分 合計 : 35%
————————————————-
※ 2013年10月から会社負担分納付比率は2%引き下げられています。
まず、「☆マーク」のついた[医療保険]にご注目。
[城鎮保険]に統合されると、、
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◎ 会社負担分 医療保険[6%]⇒ [11%]に引き上げ
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となります。
そして、「★マーク」のついた2つの保険
● 失業保険
● 生育保険
今までは、この2つの保険には[外地・農村戸籍者]は加入していなかったんです。
なぜなら、失業保険、生育保険の恩恵を受けることができないからです。
あまり知られていませんが、
● 失業保険の恩恵(失業手当)を受け取れるのは、上海・都市戸籍者のみ
なんです。
生育保険とは、法定の産休中に給与相当額を保険が補てんしてくれる制度です。
2011年に[過渡期的措置]が実行された際、5年後に[城鎮保険に統合]が目標とされていました。
同時に
● 失業保険
● 生育保険
この2種類の保険については[検討する]となっていたんです。
実際に徴収するとなったら、失業手当の給付制度や、産休中の制度にも手を入れないといけませんから。
しかし。。
今もって、この[検討結果]は出ていません。
今後の動向を「要チェック」です!
いかがでしょうか。
ここまでの話をまとめると、こんな感じです。
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■ 2015年4月からの[基数]調整
◎ 一律[2,770元]⇒ 最低(下限)[3,200元]ほどへ
■ 2015年4月からの[比率]調整
[確実]とみてOK
会社負担分 医療保険[6%]⇒ [11%]に引き上げ
[おそらく]実施、、というレベル
会社負担分 失業保険が追加 ⇒ [1.5%]
会社負担分 生育保険が追加 ⇒ [1%]
————————————————————
会社負担の納付[比率]
◎ 最低ライン: 現在(27.5%)⇒ 2015年4月~(33%)に
◎ 最 大 : 現在(27.5%)⇒ 2015年4月~(35%)に
このように「社会保険だけ」で最低[基数]の引き上げに加えて、
[比率]も[5.5%~7.5%増]になってしまいます。
あくまでも、対象となるのは
●[外地・農村戸籍]の従業員さんのみ
なのですが、
● 1人当たり、毎月
発生してしまうコストアップ要因です。
では、御社では「最低でも」どのくらいのコストアップとなってしまう可能性がある
のでしょうか?
大まかに、2015年4月以降の社会保険増額分を試算する計算式をご用意してみました。
以下のステップに沿って試算してみてください。
[大まかに試算]できる[4ステップ計算式]
———————————————————— Step1:自社にいる[外地・農村戸籍]の従業員数を把握する。
Step2:「現在の年間会社負担額」を以下の計算式に当てはめて
概算で把握する。
[A]:(762元×[外地・農村戸籍 従業員数])×12ヵ月
Step3:「2015年4月以降の年間会社負担額」を以下の計算式に
当てはめて概算で把握する。
[B1](最低):
(1056元×[外地・農村戸籍 従業員数])×12ヵ月
[B2](最大):
(1120元×[外地・農村戸籍 従業員数])×12ヵ月
Step4:おおよその社会保険「年間コストアップ総額」を算出
する
(最低):B1 - A = 想定[年間コストアップ総額]
(最大):B2 - A = 想定[年間コストアップ総額]
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[A] : 762元=2770元(2014年度の一律基数)×27.5%
[B1]:1056元=3200元(2015年度の想定基数・下限)×33%
[B2]:1120元=3200元(2015年度の想定基数・下限)×35%
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このように
ざっくり、、ですが、
● 10人いれば、年間で[3.5万~4.3万元]のコストアップに
● 50人いれば、年間で[17万~21.5万元]のコストアップに
● 100人いれば、年間で[35万~43万元]のコストアップに
なってしまう計算です。
たとえ、「昇給がゼロだったとしても」このコストアップは避けられません。
ぜひ、事前に予算に組み込んでおいてください。
・・さらに、もう1つ気になるコストアップ要因があります。
[住宅積立金]です。
上海の[住宅積立金センター]は、昨年から加入強化!の動きを活発化させています。
——————————————–
メールマガジン2013(19号)13.05.14
上海・住宅積立金に「農村戸籍者」も必加入!?
——————————————–
メールマガジン2013(速報4号)13.06.19
上海・住宅積立金通知で「必加入」が既成事実化!?
——————————————–
中でも、気になる動きが
●[農村戸籍者]への加入促進
です。
昨年から[住宅積立金センター]の説明が二転三転してきている様子は、これまでの
メールマガジンでもお知らせしてきました。
つい先日も[住宅積立金センター]に直接確認してみたところ、こんな回答になって
いました。
●『[同一労働同一賃金の原則]から、[農村戸籍従業員]にも[住宅積立金]加入は必須である!』
・・・と。
住宅積立金から[同一労働同一賃金]というコトバが出てくるとは思いませんでした。。
このように、徐々に締め付けを強化してきているのは確かです。
もしかしたら2015年に何かが・・・!?
「準備」は「最悪」を想定しておくのがセオリーです。
念のため[住宅積立金]も[農村戸籍者]が必加入となった場合の
試算式も作っておきました。
こちらは、念のため、、でご利用下さい。
[大まかに試算]できる[2ステップ計算式]
———————————————————— Step1:自社にいる[外地・農村戸籍]の従業員数と、
[上海・農村戸籍]の従業員数を把握する。
Step2:「2015年7月から加入させられる」として、2015年度の
[会社負担額]を以下の計算式に当てはめて概算で把握する。
下限: (127元 ×[農村戸籍 従業員数])×12ヵ月
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※ 127元(納付額の想定下限)=1820元(上海最低賃金)×7%
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いかがだったでしょうか。
まともに計算すると、[農村戸籍]従業員さんが、100名近くいると
年間で45万~60万元ものコストアップになってしまう計算になります。
「外地人なら人件費が安い!」ともてはやされていた時代は完全に過去になりました。
さらに、2015年は「給与の集団協議」も制度化されるウワサもあります。
急激な円安に追い討ちをかけるような逆風が吹き荒れているのかもしれません。
「人事」が「守り」だった時代は終わりです。
これからは「攻めの人事」「稼ぐ人事」に本格的に取り組まなければなりません。
「稼ぐ人事」には、2通りあります。
1つが、「消極的な攻め」。
助成金、補助金、奨励金といった国の制度を有効活用する「人事」。
「消極的」といっても、場合によっては数十万元単位になることもあります。
もう1つが、「積極的な攻め」。
「稼ぐ仕組み」を制度化する「人事」。
平たく言えば、「人事制度」なんですが。
実は、、(大きな声では言えませんが。。)
◎「稼ぐ」を最終的な目的にするなら、
「人事制度」構築にお金をかけるな!
なんです。
・・・が。
ちょっと、長くなりそうなので、続きは次回に持ち越しです。
ということで、今回は、ココまでです。
次回を楽しみにしていて下さい!
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コゾノ式 良くなる人事・組織研究所:小園英昭
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