[良くなる]コトバ(9)「一人前」

[良くなる]コトバ(9)


 一人前というのは、右から左へ仕事をこなせるようになることで、
 つまりは、半人前が一人前になること、三流が二流になることです。


 そして、多くの人はそこで止まってしまいます。


 なぜかというと一人前(二流)になれば、なんとか食べていけるし、
 他人からもつべこべ言われなくなるからです。

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出典:『ビジネスマンのための「勉強力」養成講座』
小宮 一慶 著より
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「一通りできるようになったところで、成長が止まる。
 それ以上、上のレベルに行かないし、行こうともしない。」

従業員に対するお悩みとして、中国の現場でもよく耳にします。
とかく、こういった問題点は「だからウチの社員は・・・」や
「だから中国人は・・・」という言い方で表現されてしまいがち。

でも、「ウチの会社特有」「どこかの国特有」なのではなく、
問題の本質とは、

『なぜかというと一人前(二流)になれば、なんとか食べていけるし、
 他人からもつべこべ言われなくなるからです。』

である、と。
人間であれば、世界中の誰もがこうなってしまうのが、むしろ
「普通」なんだと思わせてくれます。

しかも、
『一通りできるようになるのが、一人前』
『一人前』になるだけで満足しているから『二流』なんだ!
と喝破していて、痛快ささえ覚えますね。

『一流』になりたければ「現状に満足せず、上を目指し続けろ!」
ということだと思います。

ただ、「途上国ビジネス」で考えたとき、10年以上中国の現場に
張り付いてきて感じるのは、「上を目指す」ことの日本とは質の違う
難しさ、、です。

日本で当たり前に目にしてきた「立身出世の物語」。
「金太郎」などの昔話や、戦国歴史モノの小説など。
そして、裸一貫から世界企業を作り上げてきた起業家たちの話などに
私自身、数多く触れてきましたし、少なくとも触れるチャンスは誰に
でもあります。

また、勉強ができれば、「受験」を通してどんな出自であっても首都
にある一流大学に入学できるチャンスや、お金がなくても「奨学金」
を受けられる制度も「平等」にあります。

会社に入っても「エース」級のヒーローがいて、「上には上のレベル」
がいる現実も間近に見ることもできました。

そういった「環境」が日本なんですよね。

ここで発言される「上を目指せ!」というコトバの意味。

対して、情報もチャンスもインフラもなく、出自の違いだけが生活の
質の違いを生み出しているとしか思えない「環境」にいる途上国の人
たちに対して発言する、

「上を目指せ!」の意味と。

なんだか、微妙に異なる気がします。

たとえば、「上を目指す」をして「本当に実現できそう」と思える
現実感の違い、、と言えば良いのかな?

なので、上を目指せという「発言をする側」・「指導する側」の
「アプローチの仕方」が微妙に違う。

その違いは、国籍の違いというよりも、相手の現実の違い。

例えるなら、日本で「同じ会社の部下」に対して「上を目指せ!」
と指導する伝え方と、現実世界に絶望して「不良やってる高校生」に
夢を与えるために「上を目指せ!」と熱く語る伝え方との違い、、
に近い気がします。

根本の原因は、「同じ」。
個別のアプローチは、「違う」。
でも、その「違い」とは、国籍の違いではなく、相手が持っている
「現実の違い」。

「現実の違い」に合わせて語る、、のは、世界中で「同じ」ですよね。

コゾノ